前編に引き続き、【腰痛知らずの体になるために自分の椎間板を守る方法についてお話ししたいと思います。
今回、お伝えする方法を知る事で、
自分自身の椎間板を守る事ができ、腰痛知らずの体作りを自ら行っていく事ができるようになります。
それでは後編いきましょう!!
椎間板を守る!!腰痛知らずの体を手に入れる方法〜後編〜
<目次>
①椎間板由来の腰痛 〜前編〜
②姿勢による椎間板への負担 〜前編〜
③喫煙による椎間板への影響
腰痛に絡む椎間板変性と喫煙の関係は高い相関がある(松崎.2001)という研究報告があり、この椎間板変性は、ニコチン量と喫煙期間に相関するとされています。
Dogan氏の研究でも、腰の椎間板の変性はタバコの使用とともに著しく増加した(2019)と報告されています。
腰痛診療ガイドライン2019にも、タバコを吸う人は、タバコを吸わない人に比べて、腰痛の有病率は高く、その傾向は若者に高かったという報告がされています。
また、松崎らの研究では、ニコチンの主作用は交感神経末端からのカテコールアミン放出による血管収縮である.椎間板の軟骨板下にある盲端状の血管の変化が著明であり、血管数が1/2にまで減少し,かつ血管の内腔は内皮細胞の腫大や血栓形成により狭小化して,著明な血流障害が生じたされています。
前編でもご紹介したように椎間板はただでさえ無血管組織で数少ない栄養血管しかない状態ですが、それがニコチンの作用によって血流障害が起こったら椎間板変性が進んでしまうのも理解できます。
④椎間板に影響を及ぼす習慣や動作
1)車の振動
車のエンジンの振動により、椎間板の弾性率は最小となり最も変形しやすいという報告があります(辻.1992)
別の研究では、振動刺激が加わる事で、背骨を支えている靭帯の弱化が起こり、椎間板の水分が失われてしまうという報告もある事から、長時間の運転は座っていることによる負担だけではなく、振動による負担も加わることになる事が考えられる。
長時間の運動中は、腰を動かしたり、運転後には背伸びをしたり、歩くなどした方がよいでしょう。
2)ランニング
陸上競技と椎間板の高さ(Schmitt.2004)を研究した報告によると、マラソンランナーの椎間板の高さは減少していたという報告があります。
また、ランニング動作が腰椎椎間板変性に及ぼす影響(平沼.2018)による報告でも、フィンランド人を対象とした研究から総距離が長いジョギング愛好家に椎間板変性の発生割合が高いとの報告があります。
しかし、ランニングフォームも影響する可能性があるとのことから、ランニング時の走り方や姿勢が重要になってきます。
ダイエットや健康のためにジョギングをしている方もいると思いますが、走るための筋力や柔軟性、姿勢を保つ機能がないと腰への負担になるため、ピラティスやストレッチなどをして走れる体になることが必要です。
3)椎間板へのストレスと時間帯
午前に比べて午後の痛みが増加する場合は、午後になると椎間板の水分量が減り、椎間板が薄くなるため椎間板変性を示唆するという報告があります。
一概には言えませんが、午前と午後でどちらの方が痛みが強くなるのかによっても自分の椎間板の負担のチェックになるかもしれません。
なるべく負担のかからない姿勢や生活習慣を普段から身に付ける事が必要になってきます。
⑤自分自身の椎間板を守るために
1)ニュートラルスパイン
椎間板への負担を極力少なくするためには、『ニュートラルスパイン』が必要です。
いわゆる正しい背骨の位置(腰椎であれば生理的な前弯)の姿勢を保つ事が重要です。
多くに見られる姿勢は、横隔膜の面と骨盤底の面が開いたような状態、いわゆる反り腰状態になっている場合が多いです。
下図のように横隔膜の面と骨盤底の面を水平に位置することが、ニュートラルスパインになるために重要です。
ニュートラルスパインになることによって、体幹を安定(腹腔内圧)させることができるようになり、体幹を安定させたまま運動を行うことが基本となります。
腰椎の安定性が獲得できていることは腰痛の予防において最も重要な課題であり、さまざまな姿勢、負荷の方向、四肢の動きに対して、体幹の安定性を犠牲にせず,運動を継続できることが鍵になります。
2)椎間板に水分を
椎間板には外側の部分には血管がありますが、血管がほぼ無い組織です。
血管があることで、酸素や栄養素が運ばれ、細胞は生きていくことができますが、椎間板にはわずかにしか血管がありません。
それでは、どうやって酸素や栄養を受け取っているのでしょうか?
それは、動くことです!
動くことによって椎間板に圧力負荷が加わると水分が流出します。反対に椎間板から圧力負荷が減少すると水分が流入します。
例えば、水の中にスポンジを入れるとスポンジは水を吸い、スポンジをギュッと握ると水が出てくるのと同じようなイメージです。
椎間板も同様に、水分の流入と流出を繰り返して栄養素を取り込んでいます。
ですので、同じ姿勢で2時間も3時間も動かないでいると、椎間板の代謝が悪くなってしまいます。
3)プール
腰に不安がある方はプールの浮力を利用することもできます。
プールの浮力により体重が軽くなり、椎間板にかかる負荷が軽減したという報告があり、浮力は椎間板の栄養改善を促進する(Camilotti.2009)と結論付けています。
また別の研究報告では、水中運動を60分×週2回を3ヶ月継続するプログラムを行うことで慢性腰痛に有効であったことから、腰に不安がある方とっては、プールで歩くというのも腰への負担を少なくできる方法の一つではないかと思います。
4)ぶら下がり
腰を圧縮ストレスから解放してあげることが大切です。
長時間座っていたりすると、椎間板に圧がかかってきます。
ぶら下がったり、椅子からお尻を浮かせることで椎間板の柔軟性が上がり、水分が戻ってきて椎間板の高さの回復するとも言われています。
長時間座っていたら、椅子からお尻を浮かせてあげることも大切です!!
公園などで鉄棒を見かけたらぶら下がってみるのもいいかもしれません!
ただし、肩など痛めないように注意してくださいね
5)マシンピラティス
マシンピラティスは、姿勢改善や体の使い方を改善するには非常に有効です。
慢性腰痛の方の腰の身体イメージは歪んでいる(Moseley.2008)という報告があります。
今、自分の姿勢が反っているのか、丸まっているのか、骨盤が前にあるのか、後にあるのか、どうなっているのかがわからないと知らず知らずに椎間板や腰には負担がかかってしまいます。
自分の体や姿勢がどうなっていて、どんな風に動いているのかが分かる様になる事が腰痛には有効です。
また、ニュートラルスパインの獲得にもマシンピラティスは有効です。
このような姿勢の認知機能を高めたり、運動を制御する能力(体の使い方、モーターコントロール)を身に付けるには、マシンピラティスが非常に有効です。
また、腰痛者は腰をより多く使用する(McGill.2003)という報告があります。
つまり、腰ばかり使ってしまっているわけです。このような動作のパターンを改善していく事が腰痛改善には有効ですし、この動作のパターンを変えていくのにもマシンピラティスは欠かせません!!
<結論>
椎間板を守る!!腰痛知らずの体を手に入れる方法〜後編〜はいかがでしたでしょうか?
腰椎椎間板ヘルニアや椎間板性腰痛などの椎間板由来の腰痛は、日常生活における姿勢や動作の繰り返しによって起こった結果ですので、適切な運動指導による姿勢や動きの改善が必要になってきます。
自分の腰や椎間板を守るための方法を5つご紹介させて頂きました。
日常生活の中に工夫して取り入れて頂いたり、マシンピラティスを行って最適な体の使い方や運動、姿勢を獲得していくことも欠かせない要素の一つです!
椎間板は20歳頃から変性が始まると言われています。人生100年時代です。
自分自身の椎間板を守って、腰痛知らずの体を手に入れましょう
<筆者プロフィール>
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