『健康のために』、『腰痛予防の運動として』やっていた体操や運動によって、腰を痛めてしまっているケースが多く見られます。
私自身、腰椎椎間板ヘルニアや慢性的な腰痛があり、かなり苦しめられた経験があります。
今思えば、良かれと思ってやっていたストレッチやトレーニングがヘルニアの原因を作り出してしまっていたと思います。
もっと早く知っていれば、辛い思いをしなくて済んだのになぁ、、、と悔やまれます
『あまり腰に負担を掛けないようにしてください』と指導されることがありますが、 具体的にどんなことに注意するべきか、負担をかけないようにするにはどうしたらいいのかが分からない方も多いのではないでしょうか。
私自身、本編の内容を気をつけた事で、腰への負担は軽減され、今では腰痛を感じる事なく不安もなく生活しています。
そこで今回は、
【腰椎椎間板ヘルニアを腰専門ピラティススタジオの理学療法士が徹底解説】
という事で、元腰痛難民であり、カラダの専門家である理学療法士の視点で解説したいと思います。
<目次>
腰椎椎間板ヘルニアはどんな病態?
まず、椎間板に負担のかかることで生じる主な腰痛を簡潔にご紹介します
1)腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアとは、背骨の腰部の椎骨と椎骨の間でクッションの役割を果たしている椎間板が変性し、組織の一部が飛び出すことを言います。
腰椎椎間板ヘルニアの症状には、急性型と慢性型があります。
急性型は、重たい荷物を急に持ち上げたときや、くしゃみをしたときに起こるものです。痛みが激しく歩くこともできなくなる場合もありますが、次第に症状は軽くなります。
しかし、そのまま放っておくと、さらに椎間板から髄核が押し出されて、神経を圧迫してしまうため、慢性的な痛みへと移行します。
どちらのタイプも腰の痛みのほかに、左右どちらかの太ももから膝、足にかけて激しい痛みが起こる坐骨神経症を伴うケースがあります。
腰椎椎間板ヘルニアの場合、背中を伸ばしているときや、寝ているときは痛みが楽になります。
反対に、背中を丸めたり、前かがみになったりすると神経が圧迫されて痛みやしびれが強くなるのが特徴です。
2)椎間板性腰痛
椎間板の外側の線維輪という部分が変性や負荷によって損傷してしまうことがあります。
線維輪が損傷し、椎間板が傷つき変形することを「椎間板の変性」と言います。
年齢が若くても、アスリートなど日頃から身体を駆使する人や、腰への負担が多い職種を仕事としている人も線維輪の損傷が起こりやすいとされています。
線維輪が損傷して椎間板が変性すると、その亀裂から神経線維が浸潤することがあります。
またある研究では、椎間板性腰痛の患者へ、神経線維が浸潤していたとされる範囲に局所麻酔の入ったブロック注射を行ったところ痛みが消失したことも確認されていますので、本来は神経が通っていない椎間板が変性し内部に神経線維が進入することで痛みを感じるように変化してしまうということがこの研究から分かります。
椎間板性腰痛は、傷ついた椎間板に神経線維が入り込むことで痛みが生じる『侵害受容性疼痛』と呼ばれる痛みに分類されます。
痛みを感知する感覚器が炎症などの何かしらの刺激を受けて痛いと感じる仕組みのことです。
ちなにみ、先ほどの椎間板ヘルニアは、損傷し変性した椎間板が押されることで外に飛び出し、椎間板の外にある神経に触れることで痛みを感じるため『神経因性疼痛』に分類されます。
姿勢と腰椎椎間板ヘルニアの関係
背骨の腰部の椎骨と椎骨の間でクッションの役割を果たしている椎間板は、姿勢によって負荷は変化します。
立位を基準の100%とすると、仰向けでは25%とかなり負担が軽減されています。
一方で、前かがみの姿勢では150%と椎間板への負荷が多くなっています。
座った姿勢では140%にまで増加します。
さらに座って前傾すると185%にまで増加してしまいます。
つまり、前かがみの動作や座った姿勢は椎間板への負荷が大きくなります。
この時に背骨が丸まっていると、椎間板は強く後方へ押し出されるため、さらに負担が増加します。
立っていても腰が丸まったような姿勢でいると、椎間板にかかる負荷は高くなってしまいます。
ちなみに、日本人は世界一座っている時間が長い国民とも言われています。
そうすると椎間板への負担はかかってくる事が考えられるため、デスクワークの方は30分に一度は立ち上がるなどがおススメです。
椎間板ヘルニアは1回の負荷で発症するのではなく、繰り返し負荷が加わることで発症します。
その為、重い物を持つ時などに毎回背骨が丸まっていると、椎間板ヘルニアになるリスクが高まります。
椎間板ヘルニアや椎間板性腰痛などの椎間板由来の腰痛は繰り返しのストレスで発症するので、普段からの姿勢や身体の使い方はとても大切です。
※腰椎椎間板ヘルニアの病態や姿勢との関係はご理解頂けましたでしょうか?
詳しくは、椎間板を守る!腰痛知らずの体を手に入れる方法〜前編〜に記載していますので
、そちらもご覧ください
腰椎椎間板ヘルニアの時にやってはいけない5つの事
1.無理に曲げる・反らす・捻る
背骨を無理に曲げて丸めたり、左右に捻る動きは、椎間板の前方・側方に負荷がかかります。
また、腰椎は構造上、捻られる構造になっていないので、腰を捻る動作は腰椎や椎間板に大きな負担がかかります
日常生活で注意する動きとしては、
床の物を取る
座ったまま後ろに置いてあるものを取る
座って靴を履く
寝ていて起き上がる時
ベッドに寝る時
などの動きは、椎間板に負担がかかりますので注意する必要があります。
椎間板ヘルニアの症状が治っていても、これらの動きは注意が必要な動きとなります。
このような動きを行う場合は、以下の点に注意しながら動作を避けるような工夫をするとしましょう。
床の物を取る時 → しゃがむようにする
体の向きを変える時 → 首や腰ではなく体全体の向きを変える
前にかがむ時 → 何かに捕まり腰に掛かる圧を逃す
頭上の物を取る時 → 足台を使う
ベッドに寝ていて起き上がる時→仰向けのまま起き上がらず、横を向いて起き上がる
ベッドに寝る時→仰向けのままゴロンと寝るのではなく、横を向いてから
痛みが出るような動きを理解し、なるべく避けるようにしましょう。
2.重たい物を持ち上げる
重い物を持ち上げることは、特に腰椎や椎間板に負荷がかかります。
普段の生活でも重たい荷物運び、小さなお子様がいる場合には、抱っこなどで持ち上げるときに注意が必要です。
特に気をつけたいのが、重たいものを持ち上げる時にものを体から離して持ち上げようとすると、椎間板にかなりの圧力がかかってしまいます。
そのような場合は以下の点を工夫してみましょう。
重たい物を持つときの工夫
物を持つ時は体になるべく近づけて持つ
やむを得ず重たいもの持ち上げるときは、腰を落としてかがむようにする
3.激しいスポーツ
野球やゴルフなどの回旋系のスポーツは時に椎間板への負担が大きいため、椎間板ヘルニアの原因となります。
症状が強く出ている場合はできるだけスポーツは一旦中止にし、その間は、医療機関を受診したり、歩けるような状態でしたらウォーキングを中心に行うようにしましょう。
股関節の柔軟性低下や背中の硬さ、体幹の弱さ、体の使い方などの体の状態でスイングしている事がヘルニアを引き起こすため、体の機能を改善する事が予防や再発防止には欠かせません。
4.長時間同じ姿勢でいる
仕事や家事で長時間同じ姿勢でいることは、椎間板ヘルニアには大敵です。
特に、座ってのデスクワークは注意が必要です。
姿勢による椎間板内圧の変化を表した図になります
座り姿勢より立ち姿勢の方が椎間板に掛かる圧を減らすことができます。
2020年以降、在宅ワークが多くなっている方も多いと思いますので、スタンディングテーブルを取り入れてみるのも効果的です。
デスクワークをする際は、机や椅子選びに注意してみましょう。
①最適な座面の椅子の高さ
・床から36~45cm(身長×1/4で算出できます)
②最適な机の高さ
・床から60~72cm
・肘の角度が90度
③差尺
→椅子の座面の高さ−机の高さ
・差尺の目安:28~30cm(身長×1/6で算出)
※坐骨神経痛のブログに詳細を書いたのでご興味ある方はご覧ください
また、時間を決めて、椅子から立ち、トイレや飲み物を取りに行くきっかけを作ると良いルーティンになります。
5.猫背などの不良姿勢
姿勢の悪さは椎間板への負荷を高め、ヘルニアの症状を引き起こしやすくします。
猫背
脚を組んで座る
頭を前に突き出した姿勢
どちらかの肩が下がっている
体や首を長時間ねじったままにする
腰を丸める動作が椎間板に負担がかかりますので、普段の姿勢を気をつける事で負担を減らす事ができます。
腰椎椎間板ヘルニアでやってはいけないストレッチとトレーニング
腰椎椎間板ヘルニアでやってはいけないストレッチ
腰捻りストレッチは気をつけなければいけません。特に、写真のような姿勢で骨盤を固定して腰を捻るストレッチは注意が必要です。
腰の骨(腰椎)は構造上、捻られるような構造として作られていません。ですので、腰に捻りのストレッチを加えると痛めてしまう可能性があります。
本来、捻りたいのは腰ではなく胸椎ですので胸椎がひねられるストレッチであればいいですが、写真のように骨盤を固定した状態で腕で押しながら捻りを加えると、胸椎ではなく、腰椎が捻られてしまうので、この姿勢でのストレッチは避けた方がいいです。
腰椎椎間板ヘルニアでやってはいけない体幹トレーニング
腰痛と言えば、体幹(腹筋)を鍛えるというイメージがあるかと思います。
体幹(腹筋)トレーニングと言えば、写真のような起き上がり腹筋(シットアップ)をイメージされる方も多いのではないでしょうか?
まさに王道の腹筋トレーニングですね
しかし、この起き上がり腹筋(シットアップ)は背骨や椎間板の内圧を高めてしまうリスクがあります。
ここで腰椎の動きと脊椎にかかる負荷を見てみましょう
上記のように起き上がり腹筋(シットアップ)は脊椎への圧迫ストレスがかなり大きな負荷になりますので、腰椎椎間板ヘルニアのある方や腰に不安のある方には避けた方がよい体幹トレーニングです!!
腰椎椎間板ヘルニアの時にやってはいけない事とやってはいけないストレッチは理解できましたでしょうか?どんな動きが腰に負担のかかる動きなのかを理解しておくと、腰椎椎間板ヘルニアの発症や再発を防ぐ事ができると思います。
やってはいけない動きや体の使い方を知りたい方は、マシンピラティスがオススメです。
腰椎椎間板ヘルニアは、日常生活における姿勢や動作の繰り返しによって起こった結果ですので、適切な運動指導による姿勢や動きの改善が必要です。
そこで、ピラティスでは、最適な体の使い方や運動、姿勢を獲得することができるため、椎間板ヘルニアの治療や予防に欠かせません!
※腰椎椎間板ヘルニアでやってはいけない事はご理解頂けましたでしょうか?
詳しくは、腰椎椎間板ヘルニアの時にやっていはいけない事とストレッチに記載していますので、そちらもご覧ください
自分の腰を守る!腰痛知らずの体を手に入れる方法
椎間板に影響を及ぼす習慣や動作
①喫煙
腰痛に絡む椎間板変性と喫煙の関係は高い相関がある(松崎.2001)という研究報告があり、この椎間板変性は、ニコチン量と喫煙期間に相関するとされています。
Dogan氏の研究でも、腰の椎間板の変性はタバコの使用とともに著しく増加した(2019)と報告されています。
腰痛診療ガイドライン2019にも、タバコを吸う人は、タバコを吸わない人に比べて、腰痛の有病率は高く、その傾向は若者に高かったという報告がされています。
また、松崎らの研究では、ニコチンの主作用は交感神経末端からのカテコールアミン放出による血管収縮である.椎間板の軟骨板下にある盲端状の血管の変化が著明であり、血管数が1/2にまで減少し,かつ血管の内腔は内皮細胞の腫大や血栓形成により狭小化して,著明な血流障害が生じたされています。
前編でもご紹介したように椎間板はただでさえ無血管組織で数少ない栄養血管しかない状態ですが、それがニコチンの作用によって血流障害が起こったら椎間板変性が進んでしまうのも理解できます。
②車の振動
車のエンジンの振動により、椎間板の弾性率は最小となり最も変形しやすいという報告があります(辻.1992)
別の研究では、振動刺激が加わる事で、背骨を支えている靭帯の弱化が起こり、椎間板の水分が失われてしまうという報告もある事から、長時間の運転は座っていることによる負担だけではなく、振動による負担も加わることになる事が考えられる。
長時間の運動中は、腰を動かしたり、運転後には背伸びをしたり、歩くなどした方がよいでしょう。
③ランニング
陸上競技と椎間板の高さ(Schmitt.2004)を研究した報告によると、マラソンランナーの椎間板の高さは減少していたという報告があります。
また、ランニング動作が腰椎椎間板変性に及ぼす影響(平沼.2018)による報告でも、フィンランド人を対象とした研究から総距離が長いジョギング愛好家に椎間板変性の発生割合が高いとの報告があります。
しかし、ランニングフォームも影響する可能性があるとのことから、ランニング時の走り方や姿勢が重要になってきます。
ダイエットや健康のためにジョギングをしている方もいると思いますが、走るための筋力や柔軟性、姿勢を保つ機能がないと腰への負担になるため、ピラティスやストレッチなどをして走れる体になることが必要です。
自分の腰を守るための習慣や動作
①ニュートラルスパイン
椎間板への負担を極力少なくするためには、『ニュートラルスパイン』が必要です。
いわゆる正しい背骨の位置(腰椎であれば生理的な前弯)の姿勢を保つ事が重要です。
多くに見られる姿勢は、横隔膜の面と骨盤底の面が開いたような状態、いわゆる反り腰状態になっている場合が多いです。
下図のように横隔膜の面と骨盤底の面を水平に位置することが、ニュートラルスパインになるために重要です。
ニュートラルスパインになることによって、体幹を安定(腹腔内圧)させることができるようになり、体幹を安定させたまま運動を行うことが基本となります。
腰椎の安定性が獲得できていることは腰痛の予防において最も重要な課題であり、さまざまな姿勢、負荷の方向、四肢の動きに対して、体幹の安定性を犠牲にせず,運動を継続できることが鍵になります。
②椎間板に水分を
椎間板には外側の部分には血管がありますが、血管がほぼ無い組織です。
血管があることで、酸素や栄養素が運ばれ、細胞は生きていくことができますが、椎間板にはわずかにしか血管がありません。
それでは、どうやって酸素や栄養を受け取っているのでしょうか?
それは、動くことです!
動くことによって椎間板に圧力負荷が加わると水分が流出します。反対に椎間板から圧力負荷が減少すると水分が流入します。
例えば、水の中にスポンジを入れるとスポンジは水を吸い、スポンジをギュッと握ると水が出てくるのと同じようなイメージです。
椎間板も同様に、水分の流入と流出を繰り返して栄養素を取り込んでいます。
ですので、同じ姿勢で2時間も3時間も動かないでいると、椎間板の代謝が悪くなってしまいます。
③マシンピラティス
マシンピラティスは、姿勢改善や体の使い方を改善するには非常に有効です。
慢性腰痛の方の腰の身体イメージは歪んでいる(Moseley.2008)という報告があります。
今、自分の姿勢が反っているのか、丸まっているのか、骨盤が前にあるのか、後にあるのか、どうなっているのかがわからないと知らず知らずに椎間板や腰には負担がかかってしまいます。
自分の体や姿勢がどうなっていて、どんな風に動いているのかが分かる様になる事が腰痛には有効です。
また、ニュートラルスパインの獲得にもマシンピラティスは有効です。
このような姿勢の認知機能を高めたり、運動を制御する能力(体の使い方、モーターコントロール)を身に付けるには、マシンピラティスが非常に有効です。
また、腰痛者は腰をより多く使用する(McGill.2003)という報告があります。
つまり、腰ばかり使ってしまっているわけです。このような動作のパターンを改善していく事が腰痛改善には有効ですし、この動作のパターンを変えていくのにもマシンピラティスは欠かせません!!
※腰椎椎間板ヘルニアに影響を及ぼす習慣や動作はご理解頂けましたでしょうか?
詳しくは、椎間板を守る!腰痛知らずの体を手に入れる方法〜後編〜に記載していますので
、そちらもご覧ください
腰椎椎間板ヘルニアとマシンピラティス
腰椎椎間板ヘルニアと腰痛があり、足のしびれと動かすのも辛い腰痛がありましたが、マシンピラティスで改善が見られた一例
※医療機関で受診を予め行ってください
※効果には個人差があります
<結論>
腰椎椎間板ヘルニアは、日常生活における姿勢や動作の繰り返しによって起こってきますので、適切な運動指導による姿勢や動きの改善が必要になってきます。
今回の内容を日常生活の中に工夫して取り入れて頂いたり、マシンピラティスを行って最適な体の使い方や運動、姿勢を獲得していくことが予防、再発防止には欠かせません!
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