腰痛予防の筋トレ|インナーマッスル・多裂筋の鍛え方
- 11 分前
- 読了時間: 12分
前回の記事では、慢性的に腰痛が続く方では、背骨を細かく支える多裂筋に、萎縮や脂肪浸潤、筋肉が働くタイミングの変化がみられることがある点を解説しました。
多裂筋の働きが低下すると、日常生活やスポーツのなかで腰に負担が集まりやすくなります。
その結果、痛みが落ち着いた後も、腰痛を繰り返しやすくなる場合があります。
前回は、多裂筋の機能を見直す最初の段階として、背骨を一つひとつ丁寧に動かす分節運動をご紹介しました。
分節運動では、背骨や骨盤が今どの位置にあるかを感じながら動きます。
これは、腰をただ柔らかくするための運動ではありません。
腰を過剰に固めずに動く感覚や、背骨を自分でコントロールする感覚を取り戻すためのエクササイズです。
背骨を動かす感覚が少しずつ分かってきたら、次の段階で重要になるのが、手足を動かしても腰を必要以上に動かさずに支える能力です。
そこで取り入れられる代表的なエクササイズが、バードドッグです。
バードドッグは、四つ這いになり、片手と反対側の脚を伸ばす運動です。
一見すると、シンプルな筋トレに見えるかもしれません。
しかし、腰痛を繰り返す方にとって大切なのは、手足を高く上げることではありません。
また、長時間姿勢を保つことでもありません。
重要なのは、手足が動いても、腰を反らせすぎず、ひねりすぎず、必要以上に動かさないことです。
バードドッグは、多裂筋をはじめとしたインナーマッスルを使いながら、腰椎を安定させるエクササイズの一つです。
そこで今回は、
『腰痛予防の筋トレ|インナーマッスル・多裂筋の鍛え方』
をテーマに、バードドッグで多裂筋が働く理由、正しいフォーム、よくある間違いについて解説します。
<著者プロフィール>

<目次>
①腰痛予防に欠かせないバードドッグ
バードドッグは、腰椎の安定性を高めるための代表的なエクササイズです。

ただし、手足を何となく動かすだけでは、腰を安定させることができない可能性があります。
大切なのは、脚や腕を上げることではありません。
ここで一つ、考えてみましょう。
写真のように左脚を後ろへ伸ばしている時、左右どちらの多裂筋がより働きやすいのでしょうか。
四つ這いの姿勢から左脚を後ろへ伸ばすと、左の股関節では伸展する力が必要になります。
この時、大殿筋やハムストリングスなどが働きます。
同時に、骨盤や腰椎が過剰に動かないように、多裂筋を含む体幹の筋肉が協調して働きます。
筋電図を用いた研究では、四つ這いで脚を挙上する動作において、脚を上げた側と同じ側の多裂筋の活動が高まりやすいことが報告されています。(Okubo.2010、Dafkou.2021)
つまり、左脚を後ろへ伸ばす場合には、左側の多裂筋も腰椎や骨盤を支える役割を担いやすいと考えられます。
また、バードドッグでは、手足を動かすことで身体に回旋や反りの力が加わります。
例えば、写真のように、左脚を伸ばす際には、左側の骨盤が重力で下へ落ちようとします(右回転する力が加わります)。骨盤を水平に保つために、挙げた側の多裂筋が働きます。

バードドッグでは、手足を動かした際に、腰椎が過剰に反ったり、回ったりしないように、腰を必要以上に動かさずに支える能力を身に付けることができます。
この手足を動かした際に、腰椎が過剰に反ったり回ったりしないように、腰を必要以上に動かさずに支える能力は、日常生活やスポーツにもつながります。
* 歩く時に、腰椎や骨盤が大きく動かない
* 片脚で立つ時に腰が不安定にならない
* 荷物を持つ時に腰が反らない
* 野球やゴルフスイングなど回旋時に腰に負担が集中しない
バードドッグは、こうした動作の土台となる体幹の安定性を獲得する運動です。
②多裂筋を鍛えるメリット
腰痛の痛みは、時間の経過とともに落ち着くことがあります。
しかし、痛みが落ち着いても、筋肉は硬くなる、萎縮、筋力低下を起こしますので、痛みが取れても、そのままにしておくと再発してしまいます。
慢性的に腰痛が続く方では、多裂筋に萎縮や脂肪浸潤がみられたり、筋肉が働くタイミングに変化がみられたりすることがあります。
また、痛みをかばう期間が長くなると、腰を過剰に固める動きや、股関節・胸郭ではなく腰で動く癖が残る場合もあります。
このような状態のまま日常生活やスポーツへ戻ると、腰に負担が集まりやすくなり、腰痛を繰り返す一因になることがあります。
そのため、痛みが落ち着いた後には、単に安静にするだけではなく、多裂筋を含むインナーマッスルが必要なタイミングで腰を支えられるように整えることが大切です。
多裂筋への運動療法と、腰痛を繰り返す頻度の関係については、Hidesらの研究で報告されています。
初回の腰痛を経験した方を対象とした研究では、多裂筋を意識した特異的な運動を行った群は、通常の治療を行った群と比べて、1年後の腰痛再発が少なかったことが報告されています。通常治療群では約84%。特異的運動群では約30%でした。
同様に、特異的なコアスタビライゼーション運動を行った群では、3年後も通常治療群と比べて再発率が低い状態が維持されたという報告があります。
※ただし、すべての腰痛が多裂筋だけで説明できるわけではありません
③バードドッグで目指すべき4つのこと
1. 手足を動かしても、骨盤と腰椎を必要以上に動かさないこと(固定と分離)
2. 手で床を押し、上半身から体幹を安定させること(プッシュ動作)
3. 手足を動かす前に、体幹を支える準備ができること(予測的姿勢制御の獲得)
4. 多裂筋を含む深部筋群を適切に働かせること
1と4については、これまでの記事でも解説してきました。
<過去の記事はこちら>
ここでは、特に重要な2と3について見ていきます。
2.手で床を押し、上半身から体幹を安定させる
バードドッグでは、両手を床についた四つ這いの姿勢から始めます。
この「手をつく」という動きは、単に腕で身体を支えるためだけのものではありません。
手で床を適切に押すことで、肩甲骨まわりが安定し、その安定が体幹にも伝わります。
私たちは乳幼児期に、うつ伏せ、ずり這い、ハイハイなどを通して、手で床を支えながら身体を動かす経験を重ねます。
このような経験は、腕や肩甲骨まわりと体幹を協調させる土台の一つになります。
一方、大人になると、日常的に床へ手をついて身体を支える機会は少なくなります。
特に座る時間が長い生活では、腕・肩甲骨・体幹を連携させて支える動きが不足しやすくなります。
バードドッグでは、手のひらで床を押し支えます。
すると、上腕三頭筋、前鋸筋、腹斜筋群などが協調しやすくなります。
前鋸筋は、肩甲骨を肋骨に沿って安定させる働きを持つ筋肉です。
そのため、前鋸筋が適切に働くことは、肩まわりを安定させながら、体幹で手足の動きを支えることにもつながります。
ただし、力みすぎて、肩をすくめたり、胸を固めたりする必要はありません。
呼吸を続けられる程度の力で、床を押して身体を支えることが大切です。
3.手足を動かす前に、体幹を支える準備をつくる
手足を動かす時、身体は手足だけを動かしているわけではありません。
たとえば片脚を後ろへ伸ばすと、骨盤は回転しようとします。
腕を前へ伸ばすと、胸郭や肩甲骨も動きます。
この時に体幹の準備ができていなければ、腰椎は反りやすくなります。
また、骨盤が左右に回転しやすくなります。
本来、身体には、手足を動かす前に体幹の筋肉が働き、姿勢を支える準備を行う仕組みがあります。
これを予測的姿勢制御と呼びます。
予測的姿勢制御とは、身体が大きく崩れてから修正するのではなく、崩れそうな動きを予測して、あらかじめ支える働きです。
腰痛がある方では、腹横筋などの深部筋が働くタイミングに変化がみられることがあります。
そのため、手足を動かす前に腰を支える準備が間に合わず、腰を反らせたり、固めすぎたりする場合があります。
バードドッグを通して、手足を動かす前に体幹を準備し、腰を必要以上に動かさずに支える感覚を身につけていきます。
バードドッグは、多裂筋だけを強く鍛えるための運動ではありません。
多裂筋、腹横筋、腹斜筋群、前鋸筋、殿筋群などが協調し、手足が動いても腰を支えられる身体の使い方を再学習する運動です。
④バードドッグの基本方法
1.四つ這いになります
* 手は肩の真下に置きます。
* 膝は股関節の真下に置きます。
* 背骨は反りすぎず、丸まりすぎない位置にします。
* 首は背骨の延長線上に保ちます。

2.軽く腹圧をつくります
お腹を最大限に固める必要はありません。会話ができる程度の軽い緊張をつくります。
呼吸を止めずに、腰を支える準備をします。
3.片脚だけを後ろへ伸ばします
最初から腕と脚を同時に動かす必要はありません。まずは片脚だけを、床と平行になる程度まで伸ばします。
この時、次を確認します。
* 腰が反っていないか
* 骨盤が開いていないか
* 体重が片側へ逃げていないか
* 脚を高く上げすぎていないか
4.余裕があれば反対側の腕を伸ばします
腰と骨盤を安定させられる場合に限り、反対側の腕を前へ伸ばします。
右脚を後ろへ伸ばすなら、左腕を前へ伸ばします。左脚を後ろへ伸ばすなら、右腕を前へ伸ばします。

5.短く保持して戻します
最初は、5〜8秒程度で十分です。フォームが崩れる前に、ゆっくり戻します。
回数よりも、腰と骨盤を安定させられたかを優先してください。
バードドッグでよくある間違い

・脚を高く上げすぎる
→脚を高く上げるほど、腰は反りやすくなります。脚は床と平行になる程度で十分です。
・腰を反らせてしまう
→脚を伸ばす時に腰が反る場合は、可動域が大きすぎる可能性があります。動きを小さくしてください。
・骨盤が片側へ開く
→片脚を伸ばした時に骨盤が回ると、腰への回旋負担が増える可能性があります。骨盤は床へ向けたまま保ちます。
・肩をすくめる
→腕を伸ばす時に肩が耳へ近づくと、首や肩に負担が集まりやすくなります。手で床を軽く押し、肩甲骨を安定させます。
・呼吸を止める
→腰を安定させようとして、息を止めて全身を固める方がいます。腰を守るためには、過剰な力みではなく、呼吸を続けながら適切に支えることが大切です。
④バードドッグで腰椎が安定したら、次にやるべき事
バードドッグで腰椎を安定させながら手足を動かせるようになったら、次に座った動作や立った動作へ進みます。
なぜなら、多裂筋は日常生活では四つ這いよりも、立った状態で腰を支える場面が多いからです。
進め方の一例は次の通りです。
Phase 1|座った状態で安定させる
・Double leg pump
Phase 2|立った状態で安定させる
・Standing leg pump
Phase 3|日常へ統合する
・ウォーターバッグを持って片足立ちやランジ
この流れで大切なのは、重い負荷を進むことではありません。姿勢を変えて、それぞれの段階で、腰に負担を集めずに動けるかを確認することです。
このような形でバードドッグからピラティスマシンのエクササイズにプログラムを組んで段階を上げていくと、より安全に、かつ効果的に腰を安定させることができるようになっていきます。
また段階を上げていくためには、プログラムが必要ですので、形だけのマネにならないように注意が必要です。とくにウォーターバッグなどは負荷が大きいため自己判断せず、専門家の判断が必要になります。
多裂筋に必要なのは「最大筋力」より、必要な時に働き続ける能力です
多裂筋は、日常生活のなかで長く働く役割を持つ筋肉です。そのため、最大筋力だけを高めるよりも、必要な時に適切な強さで働き続けられることが重要です。
ピラティスは、多裂筋を「使える身体」にするための手段の一つです
ピラティスでは、呼吸、骨盤、背骨、胸郭、股関節の位置を丁寧に確認します。
これは、姿勢をきれいに見せるためだけではありません。身体が今どの位置にあるかを認識し、必要な場所を適切に使うためです。
ピラティスによって、多裂筋の厚さや筋活動に変化がみられる可能性を示した報告もあります。一方で、筋厚が増えたから痛みが改善すると断定することはできません。
痛みの改善には、運動への不安の軽減、活動量の変化、生活習慣、身体の使い方なども関わります。
だからこそTWO-WAYでは、マシンピラティスを目的ではなく、身体を再学習するための手段として活用します。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
『腰痛予防の筋トレ|インナーマッスル・多裂筋の鍛え方』いかがでしたでしょうか?
腰痛を運動で再建する|恵比寿TWO-WAY
多裂筋は、ただ鍛えればよい筋肉ではありません。
まずは、背骨を一つひとつ感じて動かす。次に、Bird Dogのような運動で腰椎を安定させる。その後に、立位やスポーツ動作のなかで身体全体を協調させる。
この順番によって、動かす能力と支える能力の両方を再学習していきます。
腰痛改善に大切なのは、筋力だけではありません。脳と筋肉が協調して働き、腰に負担を集めずに動ける身体を取り戻すことです。
運動すると腰が痛くなる方。Bird Dogや腹筋をすると腰に力が入る方。腰痛を繰り返して、好きな日常やスポーツを諦めかけている方。
TWO-WAYが、あなたの身体に必要な最適なプログラムを作成してお悩みを一緒に改善していくサポートをさせていただきます。
ご予約・ご相談はプロフィールのリンクからお問い合わせください。
※Bird Dogや体幹トレーニングがすべての腰痛に適しているわけではありません。※運動中または翌日に痛みが強くなる場合は中止してください。※強い痛み、しびれ、筋力低下、排尿・排便の異常がある場合は、速やかに医療機関へご相談ください。※本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断や治療に代わるものではありません。





コメント